東京高等裁判所 平成12年(ラ)1726号 決定
主文
一 本件執行抗告を棄却する。
二 執行抗告費用は、抗告人らの負担とする。
理由
一 本件執行抗告の趣旨は、原決定を取り消し、株式会社ピーシーネクストに対する売却を不許可とする旨の裁判を求めるというものであり、その理由は、別紙「抗告の理由」に記載のとおりである。
二 しかし、期間入札における入札の方法は、入札書を入れて封をし、開札期日を記載した封筒を執行官に差し出す方法又はその封筒を他の封筒に入れて書留郵便により執行官に送付する方法により行うこととされ(民事執行規則四七条)、送付の方法は、書留郵便か又はこれに準ずる配達記録がされる郵便に限られ、宅配便による送付はこれに含まれないと解するのが相当である。抗告人がした宅配便による入札書の送付は、入札書を入れた内封筒に封がされておらず(これのみでも入札は無効であると解すべきである。)、かつ、宅配便で送付されたものであるから、入札としては無効であるというほかはない。抗告人は、執行裁判所の担当部署に宅配便による入札の可否について確認したところ、可能である旨の回答を得たと主張するが、一件記録上、そのような回答がされたことを窺うことはできず、他に売却手続に重大な誤りがあるとも認められないから、抗告人の主張は、採用しない。
三 よって、本件執行抗告は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 櫻井登美雄 裁判官 加藤謙一 植垣勝裕)
抗告の理由
1 抗告人は、株式会社ピーシーネクストよりも高額な入札をしたにもかかわらず、原審が、抗告人の送付した入札書を無効として、その買受申出を無効としたことは違法であるから、原審は、株式会社ピーシーネクストに対して売却不許可決定をしなければならないのに、売却許可決定をした。よって、原決定は違法である。
以下、抗告理由の詳細を述べる。
2(1) ア 頭書事件に関し、平成一二年六月二八日から同年七月五日まで、期間入札の方法による入札が行われた。
抗告人は、買受申出を行うべくその準備をしていたが、準備が完了したのは、入札期間の最終日の前日である平成一二年七月四日であったため、もはや書留郵便により入札書を送付していては、期限に間に合わないおそれがあった。
そこで、抗告人は、原審裁判所以外の地方裁判所において、再三にわたって宅配便による入札書の送付が認められた経験を有していたことから、事前に、東京地方裁判所の担当部署に対し、宅配便により入札書を送付しても入札できるのかを電話にて確認したところ、「宅急便でも大丈夫である。」との回答を得たため、平成一二年七月四日、宅配便にて、入札書を送付し(以下、「本件入札書」という。)、本件入札書は裁判所に到達した。
イ ところが、開札の結果、当該対象物件は株式会社ピーシーネクストにより、本件入札書記載の金額よりも低い金額で落札されていた。執行官は、その理由について、抗告人が書留郵便によらない方法で入札したため、本件入札書を無効としたと説明した。抗告人が本件入札書を送付してから開札が行われるまで、裁判所又は執行官から、本件入札書の送達方法について補正の指示はなく、入札書を無効とする旨の通知も一切なかった。そのため、抗告人は、本件入札に参加できず、入札の機会を失った。
なお、前記決定における売却価格は一二九六八三〇〇〇円であるのに対し、抗告人は、一六〇〇〇〇〇〇〇円で入札していた。
(2) ア 確かに、期間入札における入札の方法については、民事執行規則47条において、執行官に差し出すか、もしくは、書留郵便により執行官に送付する方法による旨が規定されている。
しかしながら、宅配便による書類の送付は、受取人を確認して書類等を手渡す方法によりなされ、授受の確実性に関していえば、書留郵便と同等の信頼性を持つものである。
また、抗告人は、事前に原審裁判所の担当部署に、宅配便による方法でもよいか確認した上で入札書を送付しているのであるから、その後、抗告人に対して何の通知もなく、入札を無効としたのは、極めて不合理な取扱いである。
イ さらに、仮に、抗告人が宅配便による入札の適否について裁判所に確認をした段階で、原審裁判所の担当者が宅配便では入札を受け付けないとの回答をしていれば、抗告人は、直接執行官に差し出す方法により入札していた。
しかし、裁判所から、宅配便でも入札が可能であるとの指示を受けたからこそ、抗告人は宅配便による入札を行ったのであり、抗告人は、いわば、裁判所に送達方法を確認したがために、本件入札の機会を失ったといえる。
(3) このような事情のもとで、形式的に、書留郵便による方法で入札を行わなかったことのみをもって、本件入札を無効とすることは、極めて不合理な取扱いであるというほかない。
3 よって、本件入札に関し、執行官が、抗告人の買受申出を無効としたことは違法であるから、原審による本件売却許可決定を取り消し、株式会社ピーシーネクストに対する売却を不許可とする裁判を求めるものである。
以上